絵画教室で得たインスピレーション
インディーズのバンドマンとしての生活は苦しいものの、楽しくもあります。
しかし時折感じる切なさや虚脱感によく似た疲れは日に日に増していると言わざるを得ません。
今が正念場だと自覚する度に湧き上がる気力とともに「諦めたい」と胸の中でこだまする声もありました。
この形容しがたい感情をどうにかしたい、そんな時に目を引いたのが絵画教室です。
正直に言えば知った直後は絵画教室に行くとしても気晴らし程度にしかならないだろうと考えていたものの、そこで新しいインスピレーションを得るとは思いもよりませんでした。
近所に絵画教室がオープン!
その絵画教室は近所にオープンしたばかりの小さな教室です。
一応ホームページはあったので目を通すとデッサン画や水彩画、油絵にアクリル画など十分なコースがあって実に魅力的でした。
入会金はともかく受講料はコースによって異なりましたが気になっていたアクリル画は現在の収入でも節約すれば問題ない金額だったので後は体験をしてから決める事にしました。
ホームページに記載された電話に連絡して先生と予定を調整し、初めて足を運んだ教室はまさにアトリエといった場所です。
先生は30代から40代ほどの女性で、思ったよりも若い年頃に内心驚きました。
また教室にはまばらに人がいて子供から年寄りまでいた事にもびっくりした事をよく覚えています。
そこで受けた体験コースは学生時代を彷彿させる稚拙な内容でしたが、大人になった今において絵画に取り組んでみるとバンドや曲作りとは違う充実感がありました。
それは自分の中に渦巻く感情を凪にし、久しぶりの安らぎを与えてくれたのです。
絵と音楽の共通点を考えさせられる夜
絵画教室で感じた安らぎを得るためにさっそく入会した自分が人生と生活の糧にしている音楽と似たところを絵に見出したのはしばらく経った頃でした。
自己表現の媒体である点でも絵画と音楽は共通している事は知っていましたが、それ以外にも似ている部分を見出していたのです。
ただそれは漠然としたもので自分にも言葉に出来ませんでした。
ある日教室で描いたアクリル画を持ち帰り、夜にぼんやりと眺めていると絵が変色している事に気づきました。
その絵は静物画で、描いたものは林檎でしたが赤色が少し茶色になってしまっていたのです。それを見た自分の中に「絵も生きているんだ」という言葉が浮き上がり、次の瞬間にはその言葉に納得していました。
音楽は自分にとって生きる糧なので命を持っている存在です。
同様に絵も時間によって表情を変えるのだと考え、だからこそ自分は絵画にのめり込んだと痛感しました。多分自分は別な表現方法で自分の感情を生かしたかったのだと考えさせられました。
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